ユメウツツ@MimeiTagawa

失われた夢

深い、深い森を走っていた。
青い植物の匂いが、まとわりつく。
柔らかな土。
朽ちた葉。


あたしは何かに追われているのだ。
誰かにずっと追われている。
それが何なのか 誰なのか、
まったく分からないのだけれど、
切羽詰まっていることは確かだ。


ふいに森が途切れると、
そこは断崖絶壁だった。
のぞきこむと、
どこまでも深く、果てしない空間の、
底は海なのか陸なのか、
それさえも分からぬくらいの、
蒼褪めた空洞。


どうしよう。
立ち尽くしていると、追っ手の気配。
どうしようどうしようどうしようどうしよう。


と、背中から何かがぶつかってきて、
あ、と思ったその刹那、
あたしは中空に舞っている。
ふっと気が遠くなり、
ただただあたしは落下していく。

そこで、目覚める。

子どもの頃から、繰り返し見た夢。
あまりに何度も見るもので、
ある日、自分から崖に飛び込んでみた。
ここで落ちれば、夢は終るのだから、と。


果たして、夢は終り、
あたしは目覚めた。
見事に夢から脱出したのだった。
そしてそれから、その夢を見なくなった。
跡形もなく消えてしまった。
二度とわたしの眠りの中に、同じ夢は現れなかった。


あたしは、いったい何から逃げていたのだろう。
それさえ定かではないというのに、
自ら土を蹴ってしまったわたしは、
ひとつの夢を失ってしまった。


だからなのか、
今もまだ、蒼褪めた中空を、
墜ち続けているような気がしてならない。


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by mimei14 | 2008-02-20 23:38 | ほんとに見た夢