ユメウツツ@MimeiTagawa

あのキリンの背中に乗って


 夜明け前の商店街。
 閉ざされたシャッターは、どれも錆びついて、ペンキが剥げ落ち、今にも朽ち果てそうなものばかりだ。長い長いその商店街を、右に行けばいいのか左に行くのか、迷ったまま立ち尽くしていると、ふいにキリンがあらわれた。


 破れたアーケードに、くいっと長い首を突き出して、たたっ、たたっ、と駆けてくるキリン。
 黄色と焦げ茶色のまだら模様を、夜明け前の薄闇にぼんやり溶かし、たたっ、たたっ、と足音をたてて。


 みつけた。
 どうやらあたしが探していたのは、あのキリンだったらしい。あのキリンをつかまえて、あの背中に乗らなければ、あたしは永遠にたどり着けない。


 そう思ったとたん、キリンは全速力で駆け出した。
 茫然とするあたしの前を、風のように駆けぬけていく。右に左に、川のようにうねうねと曲がりくねる商店街を、迷いもなく、躊躇せず、長い首をまっすぐ立てて。


 あとから追うあたしも、全速力で駆けていく。
 駆けて、駆けて、駆け抜けて、商店街がつきる頃、いよいよ夜が明けてきて、このままでは間に合わないと知ったあたしは、覚悟を決めて地面を蹴った。


 ばんっと思いきり蹴った地面はやけに柔らかく、まるでトランポリンか何かのようで、その反動であたしはいとも簡単に、キリンの背中に乗ったのだった。


 キリンの首は、暖かかった。
 黄色と焦げ茶の短い毛は、思ったよりも固かった。
 ぎゅっと抱きしめて、頬をよせると、日向の猫のような匂いがした。


 あたしの重さなどものともせず、キリンは駆けてゆくのだった。
 商店街をあとにして、明けていく朝の中を、たたっ、たたっ、と、どこまでも。

 どこまでも。




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by mimei14 | 2008-03-03 17:03 | ほんとに見た夢