ユメウツツ@MimeiTagawa

満ち潮


 ほろ酔い気分で帰ってきた春の宵。
 PCの前に座ったものの、まぶたが重い。
 キーボードに手をのせたまま、うつらうつら。


 どこからか潮の匂いがする。
 海風が吹いてくる。
 生温い春の夜を押し開くようにして。


 はっと目覚めて、夢か、と思う。
 頭を振って、肩をあげさげ。
 夢魔を追い払い、モニターをみつめる。
 が、ものの五分としないうちに、またも、こくりこくりと船を漕ぐ。


 やっぱりこれは海の匂い。
 リビングに行き、カーテンを開くと、五階のはずの我が家になぜか庭がある。その庭に波が打ち寄せている。
 ざざっと音を立てて、たぷたぷと打ち寄せる。
 ああ、潮が満ちてきているんだな、と、ただ思う。


 ふと目覚めて、変な夢、と言い捨てて、モニターに向かいキーを打つ。ほどなく又とろとろと、睡魔に憑かれて船をこぐ。
 そのたびごとに、 夢の中の海は満ちる。
 寄せてはかえし、また寄せて、ひたひたひたひたと満ちてくる。


 翌日。

 昨夜は満月だったと知り、ああ、そうか、と合点した。
 満月の夜は大潮。
 夜更けから夜明けにかけて、潮はどんどん満ちていく。


 あのとき、あたしは感じていたのだ。
 ひたひたと潮が満ちるのを。
 夢とうつつのはざまの中で。



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by mimei14 | 2008-03-12 00:53 | ほんとに見た夢